非物質世界へのあこがれ

小説

何もかもがどうでもよくなって全てを捨ててしまいたいと本気で考えているとき、矛盾するかもしれないが、この世のどんな快楽よりも快く幸せな時を過ごせる。

視覚的な義務を忘れ、聴覚的な義務を忘れ、触覚的な義務を忘れて、全てを感じるままに感じていいという心の穏やかさの極地に達したような感覚。
全ての不快が快に変わり、全てをありのままに受け入れられ、果てのない幸福な永遠を考えられる。

肉体的な義務に構ってやるのが鬱陶しく、僕に絶え間のない苦痛と虚しい快楽のみを与えてくる粗悪な友達に一矢報いているような、かといってまったく恨んではいないような、こんな僕でもまだ生きてていいんだと許せるような強い勇気ややさしさを心の奥で感じられる。
この世においては何も持たない僕だが、自分自身ではこれさえ持っていられたならというものを持つことができている。

これは何なのか。
自分に強力な幸福を齎してくれる、目には見えず、聞こえもせず、肌で感じることもできない、しかし心の奥深くでは確かに感じている、かといってすぐにどこかへ行ってしまう、これは何なのか。
僕がひどく苦しんでいるときにしか現れてくれないこれは何なのか。

肉体では感じることのできない世界は、こういったもので溢れているのか。
それなら、僕は肉体的な世界から離れて目には見えない世界に行ってみたい。

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